愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
一抹の葛藤の末、私はまた日下さんとホテルにいた。

断ることはできたはず。いや、むしろ断らなくてはいけなかった。それなのに、動き出した恋心は止まる術を知らないかのごとく、考えるよりも先に体が動いてしまっていた。

金木犀を出てからお互い一言もしゃべってはいない。日下さんが何を考えているのか全くわからないのに、ノコノコと着いてきてしまった私は浅はかなんだと思う。だけどこの想いは止められないでいた。

ホテルの部屋に入るなり日下さんは私を後ろから抱きしめた。

「芽生」

耳元で囁かれる自分の名前。
呼ばれるだけで体が反応してきゅんとなった。

「日下さん、あの……」

体を捻りつつ日下さんの方に顔を向けると、そのまま綺麗な顔が近づいてキスをくれる。チュッと柔らかい音が、さらに思考を鈍らせていくようだ。

髪に手を入れられ日下さんの大きな手が後頭部を包む。引き寄せられるままに熱いキスを交わし、私も日下さんに手を伸ばし抱きしめた。
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