愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
日下さんが私を求めてくれる。
それが嬉しくないわけがない。

吸い寄せられるままベッドへ沈みこみ、手と手を絡み合わせる。日下さんに触れられるとそこから熱を帯びていくように体が反応した。

貪るようなキスは強引なようで優しい。唇が離れるたびに、もっとしてほしいと求めて自ら日下さんの首に手を回して引き寄せた。

どうして私を抱くの?
私のこと遊びで抱いてるだけなの?

そんな想いがチラつくも、押し寄せる快感が一瞬にして頭の中を空っぽにしていく。

「やっ、んんっ……」

漏れ出る声が吐息となって部屋中に広がった。日下さんは私の耳たぶを甘噛みしながら艶かしく囁く。

「もっと声、聞かせて」

「日下さぁ……ああっ!」

痺れるような感覚が体を突き抜けていく。
私は日下さんにしがみついたまま、一時の感情にどっぷりと溺れた。
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