愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
重い事実
そんな鬱々な気持ちのまま仕事をしたせいだろうか、突然のサーバー障害に見舞われシステムダウンをして、思わぬ復旧作業に追われてしまった。
鳴りやまない問い合わせの電話にシステム再起動の調整。残業で22時を超えたところでようやく復旧の目処がついた。
「西尾さんお疲れ様。もう上がっていいよ」
「はい、お疲れ様です」
グループ長が気を利かせて声をかけてくれ、ようやく仕事を終えた頃にはもうクタクタになっていた。
着替えて更衣室を出ると、外はもうすっかり暗くわずかに星が見えている。それなのに、少し前を歩く人物が日下さんだということに気づいた。
日下さんもこんな遅くまで仕事をしていることに驚く。日下さんの仕事は調達関係だが、もしかしたら今日のシステム障害に巻き込まれて残業になってしまったのだろうか。
後ろ姿だけですぐに気づけてしまうくらい、日下さんのことを意識している自分がいる。
ずっと見ていたって苦にはならない。むしろずっと見ていたいとさえ思ってしまう。それくらい好きになってしまっていることに改めて気づいてしまった。こんなことではいけない気がするのに……。
それにしても、日下さんはどこに住んでいるのだろう?
未だ謎に包まれた日下さんが気になって、私はそのままこっそり後をつけた。