愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
「芽生ちゃんはどうして暁ちゃんが結婚してるって知ったの?」

「だって、日下さん会社では結婚指輪はめてるの」

「あら、そうなんだ?」

「会社以外では外してるから、全然気づかなかった。きっと遊び人なんだよ。幻滅だよ」

飲まなきゃやってられないとばかりにピーチフィズをぐいっとイッキ飲みする。甘いお酒のはずなのに何故だか苦く感じられて、私は渋い顔をしてその場に突っ伏した。

もう終電近い時間になって、お客さんもまばらになってきた。店内の心地よいBGMだけが耳を抜けていく。

「……芽生ちゃん、暁ちゃんのこと好き?」

突っ伏したままの私に、ママが優しく問いかける。私はガバッと顔を上げると、ふてくされたように呟いた。

「そりゃ好きですよ。悔しいことに」

私の返事を聞いたママは大きく頷く。

「そっか。じゃあ教えるけど。暁ちゃんの奥様は三年前にお亡くなりになっているのよ」

「……え?」

奥様がお亡くなりに?
どういうこと?

そんなこと、寝耳に水だ。
私は理解できずに目をぱちくりさせた。
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