愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
日下の記憶
大学で出会った香苗とはアウトドアサークルで出会った。
専攻は違ったし、アウトドアとかいいながらもそれほど活発に活動していたわけでもないので、一年のときは存在を認識していただけだ。まあ、可愛い子だなとは思っていたけれど。それでも会えば挨拶する程度のものだ。
二年目の新歓コンパで遅れて参加した俺は、空いている席を見つけて声をかけた。
「ここいいですか?」
「あ、はいどうぞ。ひえっ!日下くん!」
俺を見るなり驚いた顔で椅子から転げ落ちた彼女、それが香苗だった。
「え、ちょっと、大丈夫?」
こちらが驚いて慌てて手を差し出すと、香苗は恐る恐る手を伸ばす。ぐっと掴んで立ち上がらせると、香苗は真っ赤な顔をして目を潤ませながら言った。
「日下くん、好きです!」
「え、は?……え?!」
あまりにストレートな告白に思考が置いていかれ、彼女のことをよく知らないのにそのまま勢いで了承してしまった。
後から聞いたら、香苗も椅子から落ちたことにテンパって勢いで告白してしまったらしい。
でも、嬉しかった。
お互い初めての恋人ではなかったけれど体の関係になるのは初めてで、全てにおいて一緒に歩んできたかけがえのないパートナーだった。
いつでも笑顔で元気いっぱいで、どちらかというとリードされていたような気がする。
そんな香苗だったから、体調が悪いことなんて全く気づかなかった。