愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
「芽生、胸元のあいた服はよくない」

「どうしてですか?可愛くないですか?」

今日は大きなレースがあしらわれた可愛いキャミソールに前ジッパーのパーカーを羽織ってきた。パーカーからチラリと見えるレース部分がおしゃれで可愛いと思っていたんだけど。

「そうじゃなくて、誰に見られるかわからないだろう?」

「えー、誰も見ないですって。ただのキャミソールですし」

あははと笑うと不満げな日下さんにげんこつで軽く額を小突かれた。

「あいてっ」

「また悪い男にひっかかるぞ」

「私は日下さん一筋なので悪い男には引っかかりません」

間髪入れずに主張すると、日下さんはぐっと押し黙ってから呆れたように額を押えた。

「はあー。だったら、心配かけさせないでくれ」

「……もうハイネックしか着ません!」

「……それはさすがに暑いだろ」

日下さんは呆れながらも小さく微笑んだ。
笑ってくれたことが嬉しくて私は一気にテンションが爆上がりだ。

「何食べに行きます?」

「実はノープランなんだ。何か食べたいものある?」

「じゃあお好み焼きにしません?」

「今日は禁酒な」

「もちろんです!」
< 71 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop