愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
囚われの君
毎年夏に菩提寺で法要が執り行われる。
香苗が亡くなって三年目だ。
もう三年も経ったのかと感慨深い気持ちになると共に、この三年間自分は何をしていたのだろうという虚しさが溢れてくる。
フォーマルスーツに身を包むととたんにピリッとした空気に包まれる。
寺の門をくぐると、木々に止まっているセミたちの声が一層大きく響いた。微かに鼻をかすめる線香の香りは緊張感をもたらす。
今年の夏も暑くなりそうだと思いながら、俺は奥へと進んだ。
受付でお布施を払い本堂に上がると、すでに人で溢れ返っていた。檀家合同の法要なのでたくさんの人が集まるのだ。久しぶりに会う親戚と挨拶を交わしたり中には子供が面白がって走り出したりと、一種のイベントのようなものだ。
この賑やかな感じが、俺のしんみりとした心を幾ばくか緩めてくれる。
喧騒の中、空いたスペースに座り日下家の名前が呼ばれるのを待っていると、やがて香苗の両親もやってきた。