愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
てっきり香苗の両親が指輪を持っているものだと思っていた。いや、持っていなくとも処分してくれて構わない。そう思っていたのに、四十九日が過ぎた頃、なぜか俺のカバンの内ポケットに香苗の指輪が入っていた。

「……どうして?」

普段カバンの内ポケットなんて使わないから、全然気づかなかった。

一体いつの間に……?

こんなことをするのは香苗しかいないだろう。指輪だけが入っていて、メモは何もなかった。

結 婚 指 輪 を 返 さ れ た

まさかこんな形で自分の元に戻ってくるなんて思ってもみず、ショックは大きかった。だけど香苗を亡くした悲しみが大きすぎて、その出来事は悲しみに上乗せされただけだ。

何かを深く考える余裕なんてなかった。


***


俺は体裁のために着けていた結婚指輪を外す。

リングケースに並ぶ二つの指輪。
虚しさで押し潰されそうになる感情はリングケースを乱暴に閉じ、そして引き出しの奥深くへ押し込んだ。
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