自分勝手な恋

「あの、いつも出張のお土産をありがとうございます。わざわざ経理にまで……」

「いやいや、広野さんにも経理課のみなさんにも、僕やうちの課の連中がお世話になっているからね。記入漏れとか、僕もチェックミスしたりして、ごめんね?」

「いいえ、そんな!」


 大歓迎ですとは言えない。
 設計フロアに行くチャンスだからなんて。
 ああ、どうしよう。せっかく二人きりなのに、これ以上何を話せばいいのかわからない。

 十七歳も年上の男性が好む会話って何?
 手の中のカップにはもうコーヒーがなくて、いつまでもここにはいられない。
 いつ誰が入ってくるのかもわからない。


「今度、食事に行きませんか!?」


 うわ、いきなり何を言ってるんだろう。
 ストレートすぎだよ。


「あ、あの……お土産のお礼に……」


 どうにか誤魔化してみたけれど、松木さんの困惑した顔を見れば不自然すぎたのはわかる。
 それでも後にはもう引けない。
 さあ、判決をどうぞ!


「……お礼なんていいよ。でもそうだな、みんなで飲みにでも行こうか? 経理と設計で。普段、あまり交流する機会もないし」


 上手くはぐらかされた。
 そうだよね。当たり前だ。
 それでも曖昧に終わらせないために布石を打った。


「じゃあ、経理課のみんなにさっそく声かけてみます。また日取りとかメールしてもいいですか?」

「うん、もちろん。こちらで詳細は詰めるよ」



 よし、これで堂々とメールが送れる。
 ここからプライベートな連絡先もゲットして、また改めて誘おう。
 一年の間、不毛な片想いを続けたんだから、ダメ元で当たって砕ければいい。


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