光を掴んだその先に。─After story─
おんぶより抱っこが好きだったと、いつかに言ってたっけ…。
本当にそうなんだなぁと呑気に考えたいのに考えられない今。
「…確かに俺は屋敷を空けることが増えてる。それにあまり構ってやれてない」
「え…?」
「だが、お前のことが嫌いになったわけじゃない。…つうかそれだけはあり得ねえだろ」
拗ねたように口を尖らせている。
こんな顔、初めてだ…。
もしかしてヤキモチとか妬いてくれてたり…?
「…うん、いろいろ忙しいの知ってるよ。それに今日は本当に施設のカレーが食べたい気分で…」
「…寂しかったりするか」
寂しい…とはちょっと違うかもしれない。
確かに屋敷は大人ばかりだし、男の人ばかりだし…。
いたとしても陽太くらいだけど、陽太と仲良くすると今度面白くない顔する人がここにいるし。
それに陽太も陽太で新しい友達ができたっぽくて、そっち優先にしてたりもするから。
「ううん、寂しくないよ。…こうして絃織と話せるからいい、」
ぎゅっと抱き寄せられる。
でもこれは本当の気持ちだ。
仕事投げ出してくるのは困るけど、こうして私が欲しかった“特別”で接してくれるから。
「…帰りたくないなぁ……、」
しーんと沈黙が余計に沈黙。
………え、私いまなに言った…?
「な、なんて!変な意味じゃなくて、ほら夜景きれいだからずっと見てたいなって…!」