光を掴んだその先に。─After story─
経験も資格も、取り柄も志望動機も。
本当に何もないって思い知らされた。
「今はまだっ、だめなんだって…っ」
「…でかくなりてえんなら俺が揉んでやる」
「えっ本当に…?って、それだけじゃなくてっ!!」
譲ってしまうよ。
このままだと私、完璧なあの人にあなたを譲っちゃう。
でもそうはしたくないから、まずは人並みに立てるようになろうって、就活もお料理教室も頑張ってる。
「光は…っ、光だけじゃ光になれないからっ!
暗闇があるから綺麗でっ、光を光にさせる周りのものが揃ってないとだめなの…!!」
どうしようまとまらない。
けど、お料理だってそう。
いろんな食材が合わさって、ひとつのものが作られる。
ひとつひとつがしっかりした食材だからこそ、料理になる。
私はまだ揃ってない。
ぜんぜん足りないから。
「俺だってお前が思ってるほど大人じゃねえよ。
今だって、…無理やりにでも抱いちまえって思ってる俺だっている」
「っ…、」
「理性なんかギリギリだ。…だから、さっさと俺に抱かれろ」
あ、だめだ……、とろけちゃう…。
いつもいつもそうやって言葉ひとつで溶かしてくるから、たまに恨みたくもなっちゃって。
「っ、ぁ、…っ、きょうは、っ、」
「絃、」と、吐息混じりの甘い声で名前を呼んでくる。
服の下に入った手がまさぐるように動かされて、全身にビリビリと電流が流れて。
「今日…はっ、お、女の子の日なの……!!!バカ…っ!!!」
そして私は、そんな必勝法で逃げた───。