光を掴んだその先に。─After story─
「なにか特別な習い事などはしていたりしますか?」
特別な習い事…。
これといってしていないけど、あれは習い事のうちに入るのかな…?
「茶道と、華道…剣道、空手を少し…」
「おお、それはすごい」
プロのような人にいつも教わっていた。
厳しかったけど優しくて、甘くて、褒めてくれて。
そんな毎日がいつの間にか楽しくなっていて。
そんな彼が今、一番に大切な人になって…。
『…絃、───……抱きたい。』
っ……!!!!
ガタッ…!と、勢いよく椅子から立ち上がってしまったのは私。
「天城さん?どうかしましたか?」
「あっ…いや、し、失礼しました…」
そのままスッと座る。
最悪だ………こんなときに思い出した…。
あの甘くてとろけてしまいそうな声と顔を。
「クスッ」
それは、同じように面接を受ける数人からだった。
私の行いが面白くて笑っているのではない。
「馬鹿だなお前」なんて、鼻で笑っているのだ。
……終わった。
大事な面接で、こんな大失態……。
「…あまき……いと、」
そんな中、ずっと黙っていた男がポツリとつぶやいた。
その人は難しい顔をしていた面接官の1人で、この会社の社長さん。
「社長、どうかされましたか?」
「…あまきさん、だったかな」
その人は部下の質問は放って、私を見つめてくる。
少し食いぎみに「は、はいっ」と答えた私。
「大変失礼な質問をするが、…君の親御さんの名前を教えてもらってもいいかい?」