光を掴んだその先に。─After story─




親御さんの名前って、お父さんの名前ってことだよね…?

でもどうして私の面接なのにお父さんの名前を知りたいんだろう……。



「…天鬼…剣、ですが…」


「おお!やはりそうでしたか!いやいや、これは参ったなぁ」



まるで手の平をコロッとひっくり返すように、難しい顔をしていた社長が初めて笑いかけてくれた。

そして周りのCEOの皆さんまでもがよそよそしくなって。



「ぜひうちの会社に入ってもらいたい!君は私の推薦入社としよう!」


「……え、…えっ?」



どういうこと…?

どうしてお父さんの名前を言っただけで…?



「天鬼さんには古くからお世話になっているんだ。うちの会社がここまで発展できたのも天鬼さんのおかげでね」



その言葉がずっと胸につっかえたまま、面接は終わった。

高校卒業と同時に入社してくれと、社長から頼まれる事態になって。



「また時期が近づいたら連絡と入社書類を送るよ。お父さんにもよろしく伝えてほしい」


「は、はい…」



まさかのその場で即決…。

面接室を出て一息吐くどころか、未だに理解ができないままエレベーターへと向かった。



「はっ、結局コネ入社じゃねぇかよ」



それは同じ面接を受けた3人の内の1人だった。

唯一の男の人。

大学生で、一番ハキハキ受け答えをしていたから彼が受かるのではと思っていたくらいだ。


そんな男がエレベーターの中、私へ向けた独り言をポツリ吐き捨てた。



「高卒なんかそんなもんよね」


「大体おかしいと思ったー。はー、こんな会社やめよ」



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