光を掴んだその先に。─After story─
「あの…、職場見学に来た天鬼ですが…」
「……あぁ、ちょっと待ってくださいね、しばらくそちらにお掛けください」
「…はい」
いや、時間指定しておいてそれはないよ株式会社ヨククルさん。
明らかに今、「そういえばそうだった」って反応したよね。
そんなのしてたら誰も来ないよ…。
なにが“ヨククル”だ。
“コナイヨ”に変換しとけっての。
「うちは中小企業で社員も少ないが、長年続いているところでね」
「そうなんですか…」
「若い子が誰もいないから来てくれて嬉しいよ」
正直やる気はなかった。
職場見学、一応は見学だけしておこうと応募しただけで。
小型印刷会社の一般事務職。
とくにやりたい仕事でもなく、ただ流れのまま辿り着いたって感じだ。
「仕事内容もフォーマット通りにやっていれば問題はないから、尚更すぐ覚えられるはずだよ」
なんかもう入ってくれオーラがすごい…。
でもここ、確かに若い人いないし…かなりボロいビルの一室だ。
それに中も暗くて換気も滅多にされていないような埃っぽさがあって。
そう、大手でなければ天鬼は関わっていないんじゃないかと、あえて無名な会社を選んだ私。
「それにここは寮も完備されててね。一人暮らしのお金を貯めるためだったり、親元を離れての生活を経験したい社員のために用意してるんだ」
「えっ!?そうなんですか…!?」
ここにきて初めて食い付いてしまった。
「あぁ」と、軟弱そうな社長さんはうなずく。
「だからもし君も経験したいなら、ぜひ応援するよ」
「入社できたときはぜひ…!!」