光を掴んだその先に。─After story─
家賃光熱費は会社持ちだなんて、中小企業にしては中々いい特典なんじゃないの。
それに寮ってことは屋敷から離れて1人で生活するってことだ。
それがある意味、私が一番にしなければいけないことのような気がする。
「あ、あのっ!!ぜひ御社の面接を受けさせてもらえませんか…!」
「おお!本当かい!?それなら早くて3日後なんてどうかね?」
「はいっ!ぜんぜん大丈夫ですっ!」
一人立ちとは、このことだ。
絶対そうだ。
まず最初はこういう小さな会社でコツコツやって、いずれその経験を活かしてひとつひとつ階段を登っていけばいいんだ。
……あんな高層マンションは買えないかもしれないけど。
「天城さん、ちなみになんだが…」
「はいっ」
「親御さんの───」
あぁ、やっぱりだめかも…。
またお父さんの名前を聞いてくるんだ。
どこまで天鬼は関わってるんだと、お父さんを責めたくなってしまった。
「親御さんの、ご職業を聞いてもいいかな」
「…え、どうしてですか」
「それによって天城さんの初任給も検討したいと思ってね。
ほら、高卒で働く子の中には貧しい家庭で…ってのも多いだろう?」
ごめんなさい株式会社ヨククルさん。
最初、あんな失礼なこと思って本当にごめんなさい。
「だから、そういう若い子には我々もチャンスを与えたいと思っているんだ」
じーんと胸が熱くなった。
まだまだこの世の中はそこまで捨てたもんじゃないらしい。
「…け、経営者です。あっ、でも全然そこまですごいわけじゃなくてっ!」