光を掴んだその先に。─After story─




「こんなときに言うのもズルいって分かってるが、…俺はずっとお前にそう言いたかった」



けっ…こん…。


決意が揺らぎそうになる。

今はまだ全然だめなのに、私個人のわがままな気持ちだけで突っ走りたくなってしまう。



「けど、お前のやりたいことを尊重したいとも思ってる。…だから俺は待つ」



ハッキリ伝えてくれたと思ったら、保険をかけたその人。

それがこの男の優しさだってことは十分に知ってる。


それがこの人らしくて好きだったりもして。



『絃。…俺と───…誰にも切れない、俺たちだけの新しい“絃”で……繋がろう、ぜ』


『だから俺のとこに来いっつってんだろ。…俺の、…嫁、的な』


『俺が守る。“那岐”を背負わすことでお前がどんなに狙われようと…それでも俺が命懸けても絶対に守ってやる』



一緒に背負いたいの、私。
本当は誰よりも“那岐”になりたいんだよ。

だからあのとき、車の中でプロポーズされて嬉しかった。

……断っちゃったけど。


でもね、でもさ……。



「でも……まだっ、ぜんぜん駄目なんだってばーーーーっ!!!バカっ!!!」



これはきっと、2度目のごめんなさいをした。


まだ駄目。

でも、どこまで頑張ればいい?とも思ってる。

そのゴールはどこにあるの…?って。


それに絃織だって───…



「師匠…!!回し蹴りと正面突き教えてくださいっ!!」


「うっわぁ…、涙と鼻水の区別どこそれ。もう滝じゃん」


「押忍…っ!ありがとうございますっ!」


「うん?なんのありがとう??」



千春さんにも負けないくらい、誰にも負けないくらい強くならなくちゃ駄目だもん…。








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