光を掴んだその先に。─After story─
容赦なく俺はそいつの胸ぐらを掴んでいた。
さすがに男と女では力の差も身長差もありすぎる。
佐伯の足は今にも床から離れそうだった。
「っ…、なにをする…、」
「お前は確か女だからっつう理由で手加減されるのが昔から嫌いだったな」
「っ…!」
低い声で放ち、掴む力を加えれば息が出来ないほどに苦しくなったのだろう。
顔を歪ませ恐怖に怯える女が目の前にいた。
「だったらこのまま顔面潰すくらい殴っても許されるってことだな。
もしてめえの女を悪く言ったのが男だとしたら、俺は迷わずそうしてる」
「っ、どうしてそこまで執着するんだ…っ、あんな小娘のどこが…っ!」
「光だっつったろ。あいつが傍から消えたら、…俺はまたずっと光のない暗闇のままだ」
あんな思いするのは2度と御免だ。
やっと掴めたんだよ。
俺からすれば、触れることさえ許されないような眩しくて温かな光を。
こんな大罪人の息子には繋げちゃならない光だったというのに、それでもあいつは出会った頃と変わらず幸せそうに手を伸ばしてくれる。
「お前が思うずっとずっと前から俺たちは繋がってんだよ。簡単に切られてたまるか」
パッと腕を離せば、ペタリと座り込んで咳き込む女は苦し紛れに「どうしてあたしじゃ駄目なんだ」と、落とす。
「あたしじゃ、なぜその代わりになれないんだ…っ」
「代わりになんかならねえんだよ、誰だったとしても。それにお前も…“代わり”だなんて寂しいこと言うな」
佐伯は揺れる瞳を開かせた。
もしそれを“友達”という言葉で表現するならば、かつての高校生の2人は確実にそうだったのだろう。
俺たちは、友達だった。