光を掴んだその先に。─After story─
「…しないんじゃなくて、できないんだよね」
「できない?なんで?」
「だって見るからにお嬢様だもん。俺は親がいなければ身内もいないような男だよ?
……無理でしょ、いろいろと」
「───無理じゃない!!!」
ガタッ!!と、立ち上がってしまった。
周りは一気に私たちへと注目。
「…すみません」と謝れば、ガヤガヤと賑やかさは取り戻された。
「無理じゃない。それは絶対に違う。そんなの関係ないよ陽太」
その過去は私だって関係してる。
私の大切な人だって、その過去にずっとずっと苦しめられて生きてる。
でもだからと言って彼らが自分の幸せを手放すようなことは絶対に間違っている。
「絃織にも陽太にも2人にしかない優しさがある。…私はそれを誰よりも知ってるつもりだよ」
そのうちの1人とは恋人で、1人とは親友なんだよ?
そんな私が一番に知らなくてどうすんの。
私が今までどれだけ絃織や陽太に助けられてきたと思ってるの。
「気づいたら私たちが友達になってたように…、つらい過去は今の自分を作ってくれたひとつの思い出に変わってるものだって……私は、思う」
あぁ、伝われ。
伝わらなくていいから伝わって、お願い。
だってそんなの悲しすぎる。
施設育ちだから、親がいないから、親が取り返しの付かない罪を犯してしまったから。
だから自分は幸せになれない、なんて。
そんなのってないよ。
「だからなんで絃ちゃんが泣いてるんだってば。…絃織さんに知られたら殴られるの俺なんだよ」