光を掴んだその先に。─After story─
「だから俺のとこに来いっつってんだろ」
「…それは……どういう、意味…?」
やっと聞けた。
ずっとずっと気になって夜も眠れない日々が続いていたくらいだ。
これで今日から快適な睡眠が取れそう。
「…俺の、…嫁、的な」
小さな小さな声だった。
途切れ途切れの単語は、頭の中で言い直してやっと言葉になる。
そんな言葉はドキドキ、嬉しい、幸せ、そんな感情が胸いっぱいに埋めるけれど…。
「俺が守る。“那岐”を背負わすことでお前がどんなに狙われようと……、
それでも俺が命懸けてまでも絶対に守ってやる」
「…命懸けちゃったら意味ないよ…。絃織がいなくなったら私泣いちゃうよ」
「…そりゃ駄目だな。けど、それくらい絃は俺にとってすべてなんだよ」
それは最高のプロポーズだと思った。
夜景の見える高台で、静かな車内で、大好きな人の膝の上で。
じっと私をまっすぐ見つめて言ってくれる。
これがプロポーズじゃなかったとしたら何だというのだ。
「…いまの私じゃ、…まだだめ…」
そしてそれは、受け取り方によっては“断った”ということになってしまうのかもしれない。
私の返した言葉に目を見開いている絃織。
「だめなの、ぜんぜんだめ…。もっと、ちゃんとしなきゃ…」
だってお料理できない。
茶道だって華道だって、あんなに教えてもらってそこそこ。
彼は天鬼組の若頭だ。
その横に今の私が立つ資格はきっとない。
「そ、それに私まだ高校生だからっ!まだ18にもなってないし、子供だし…」