光を掴んだその先に。─After story─




仕方ないじゃん、あんたらが泣かないんだから。

我慢しちゃうんだからどいつもこいつも。


だから泣くことしかできない私がこうして泣いてるの。…今も昔も。



「幸せになっていいんだよ…、陽太も絃織も……、幸せにならなきゃだめなんだから…!」


「…なっても許される?…だって俺、絃ちゃんを───」


「言わなくていーからっ!そうやって過去を掘り下げるのはもうおしまい!
哀しみの連鎖は……絶対にもう私が、終わらせる」



そんな格好つけた言葉、私はどこで覚えてきたんだろう。

でも陽太の言おうとしてることは分かっちゃうから。


「絃ちゃんを殺そうとした」って、言おうとしたことなんて。


あれで分かったんだよ私。

哀しみは哀しみしか生まないって。



『桜木は殺してない。ただこの上ない苦しみを味わせて、人間としては…殺した。』



いつかに彼は静かに話してくれた。

私たちに消えない傷を与えた男を、佳祐の父親を、彼は殺すことはしなかったって。

ただ、もう日本には居ない。
外国に売り飛ばすように追放したと。


あの男はかなり危ないことばかりをしていて、いずれクスリ漬けとなってどのみち普通には生きれない。

だから普通の人間としては死んだようなものだって。



「本当に終わらせてくれちゃうような気がするよ、絃ちゃんなら…」



そんな陽太の声もまた、震えていた。


終わらせるよ。
絶対に終わらせる。

“那岐”である2人がこの先、どんな扱いを周りから受けたって。


そんな奴らを蹴り飛ばせるくらいに強くなって。



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