光を掴んだその先に。─After story─




えへへ、なんて笑って。
いつも通り振る舞って。

そうすれば彼も「そうだな」って納得してくれるから。



「…やっぱ拐いてえわ」


「んんっ…!い、おり…っ、」



甘いものにとろけてしまいそうだ。

不安も、劣等感も、いろんなことに対する葛藤も、ぜんぶが溶けてゆく。


溶けてしまえ。

そんなもの、どっか行っちゃえ。



「だったらせめてお前が18になるまで待つ。無理強いもしない。…だが、俺も我慢してるっつうことだけ覚えとけ」



ちゅっと弾けて名残惜しく離れた。


その意味は、きっとひとつだけじゃない。


キスのもっともっと先はまだ出来ていない。
いつもタイミングが邪魔をする。

私の心の準備だってまだまだで、そんな私に優しいキスで返してくれちゃって。


それにまだまだ想像すらできないから…。



「…でも18って、…あと1ヶ月半でなっちゃうよね……?」


「ならあと1ヶ月半後だな。俺にとっては長い」


「待ってっ!せめて高校卒業したらとか…!」


「これ以上待てるわけねえだろ。…今までだって俺は十分待ったんだ」



14年の空白があって、やっと会えて。

それで今のような形の“絃”で繋がって。



「…うん。……“那岐”、だいすき。」



本当はこの呼び方の方が好きだったりする。

でも名前を呼び捨てできる特別が嬉しいから。



「…やっぱ前倒しってのも、」


「だめだよ…!バカっ!」



那岐 絃織は。

どうやら私が想像していたよりもずっとずっと私のことが大好きらしい。


…なんて、自惚れてたりする。








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