光を掴んだその先に。─After story─
那岐side




伝わらない、伝わってくれない。
俺なりに言葉にしてるはずだ。

それでも今度は俺じゃなく、絃がどこか一線を引いているようにも感じる。


それに俺のプロポーズをあいつは断った……のか…?



「お嬢っ!お頭!おかえりなさいっす!!」



戻れば暑苦しいほどに迎えてくれる男たち。

新しい年となり、また新たな組員も増えて、より一層天鬼組は大きくなる一方で。


最年少幹部だったガキが若頭になった───と、腑に落ちない輩もいる。


そして他の極道グループからもナメられた視線が送られるようになり、どうやらここを乗っ取ろうとしている組もいるらしい。



「お嬢、それはなんですか?」


「わぁっ!もう見ないでってば!」


「しっ、失礼しました…!お嬢も年頃の女の子っすもんね…!」



そして絃はどこか窮屈そうに過ごしていて。


最近になってリップを付け始めたのだって、雑誌をたくさん購入してメイクとやらを勉強しているのだって。

それは俺のためにしてくれてるんだろうと嬉しい気持ちもあった。


しかしそんなものを知らない男たちは、興味津々に近づいては声をかける。


───それに何より。



「今日一緒に寝ようっ」


「……おまえ、意味わかって言ってんのか」


「え?意味…?あのね、面白い映画がロードショーで放送されるから一緒に見たいなって!」



これは誘っていると思っていいと、勝手に決めていた。

さすがに待つとは言ったが俺も我慢は今までたくさんしてきた。


だから許されるだろ、そうなったときくらいは。



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