光を掴んだその先に。─After story─
クルッと回って右足を曲げて、スパンッ!!と伸ばせば。
ちょうど屈んだ男の一番大切な部分にクリーンヒットするわけで。
「ぬおおぉぉぉぉおおおおおーーー!!」
声にならない男の叫び声に会場が包まれた。
これが回し蹴りというヤツだ。
陽太との稽古でいつも見せられて、やってみたかった技。
「待って絃ちゃん、それ回転まわし蹴りだから。普通の回し蹴りよりレベル高いやつなんだけど」
「えっ!?そうなの!?」
「俺それ教えてないのになんでできたの。合格だよ、もう」
なんかできてしまったらしい…。
けど、残念ながらまだ終わりじゃない。
絃織にあんなに悲しい顔させたここにいる奴ら全員に同じことをして回りたいけど、それはさすがにできないから。
「おいハゲ、これで終わりだと思うんじゃねえぞ」
「うわ…っ!!」
痛みに悶絶しながら踞る男の襟を、ガシッと掴む。
「おりゃーーーっ!えいっ…!!」
背中に乗せるように背負って、そのまま地面にバンッと落とした。
「しばらく寝てろっ!!」
「それ柔道だし!あはははっ、絃ちゃんサイッコー」
投げる瞬間、せめてもと抵抗した男に掴まれたワンピースがビリッと破けてしまった。
でもそんなのどうだっていい。
気づけば株式会社ヨククルの社長さんは、すでに屍状態となって寝ている。
私はそんなのお構い無しに肺に目一杯空気を吸い込んで。
「うちの人をバカにしたらこーなるからっ!!天鬼と契約切りしたいならどーぞご勝手に!!そんなのこっちから願い下げ!!
だから2度と私の大切な“那岐”を悲しませんなっ!!わかったか愚民共……!!」
マイクがキィィィィンと鳴って静まり返った。
目を見開くお父さん、ふっと満足気に笑う千春さん、パチパチと拍手をする陽太。
彼の顔は───…見なくても分かる。