光を掴んだその先に。─After story─




「あっ、絃ちゃんどこ行くの!」


「着替えてくるの!それと、帰る!!!」


「えぇっ、なんでさ!」



なんでって…。

だってせっかく決まった就職がまたゼロからのスタートになったんだよ!?

こんな呑気にわいわいパーティーなんかしてられるかっての!!



「就活生ナメんなっ!!」



ビリビリのワンピースを引き摺って、私は会場を出た。

とりあえず明日からまた企業を探すところからのスタート。


また振り出しに戻っちゃった…。



「あーーーもうっ!!」



でも、スッキリしていて。

あんな勝手なことしちゃったからお父さんには怒られるかもしれないけど…。



「あのヘタレっ」



保険かけず、誤魔化さず。

ちゃんと言ってくれたなら私は「うん」って言うのに。

そんなものをずっと待ってるのに…。


だって決まってた就職がなくなったことなんて正直どうでもいい。

あんなの本当は就きたくない仕事だった。
興味なんかこれっぽっちもない。



「結局こーなるし…っ」



タイミングがいつも悪い。


今だってビリビリのワンピースで、またこうして走ってるわけで。

せっかく雅美さんが巻いて整えてくれた髪もぐしゃぐしゃで。



「てか最上階まで階段ってどゆこと!?」



なんでエレベーターに乗らなかったの私。

バカなの、もう何階かも分からないよ…。



「もうっ、最悪…っ」



でも、その“最悪”は。

あの誕生日の日とは全然ちがう意味のもので。


あの日浮かべていた涙とは反対に、今の私には笑顔が浮かんでいた。



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