光を掴んだその先に。─After story─
「最上階のスイートルーム。馬鹿だからたぶん、エレベーターの場所わからなくて階段から行ってる」
揺れた瞳には覚悟のような光が宿されて、浅くうなずいた絃織さんは昔のように俺に笑いかけてくれた。
「ありがとう陽太」
つぶやいたと同時、まっすぐに走ってゆく。
残されたこの場所は佐伯のおねーさんに任せるとして。
「はーー、楽しいパーティーだったなぁ」
「どこがやっ!!」
なんてツッコミも無視無視。
まぁいろいろあったけど、俺たちらしくていいんじゃないの?
ほら、終わり良ければなんちゃらって言うし。
「…俺も桜子に会いたくなっちゃった」
「───天道」
スマホ片手に会場をあとにしたとき、追いかけるように俺の名前を呼んだ男がいた。
どう反応したらいいか分からないから、振り向けないまま足だけ止めて。
「おい、組長の呼びかけに反応なしか?」
「…どう反応しろっていうんですか」
ねぇ、───天鬼 剣(あまき けん)さん。
この男とこうして話す機会を俺はどこかで避けていた。
彼らはいつも何事も無かったかのように接してくれるけど、それでも俺が犯してしまった罪は消えない。
だって俺はあんたの父親を殺したんだから。
「ありがとな、天道」
「…なにが、ですか。俺を殺したいくらい恨んでるはずなのに」
「残念ながら俺もお前の気持ちは痛いほどに分かるんだよ」
恨みたくても恨めねえ───と、天鬼 剣は笑った。
ありがとうってなんだ。
あんたは許さなくていいのに。
俺を恨んで恨んで、いつか殺してくれて構わない。
「那岐 慎二を殺したのは俺なんだ」