光を掴んだその先に。─After story─




思わず勢いよく振り返ってしまった。


だってそんなのあり得ないでしょ。

あのときの事件は世間には隠蔽されていたが、極秘の記事にも“那岐 慎二は自害”と書かれてあったというのに。



「俺なんだよ。親友を、絃織の父親を殺したのは。だからお前を恨めるほど綺麗な人間じゃない」



同じじゃないだろう、あんたと俺は同じじゃない。

だって俺は復讐者だ。


那岐 絃織を苦しめるために周りの関係ない奴らを消そうした。

そこに、天鬼 道玄(あまき どうげん)が入っていた。



「ずっと続く柵─しがらみ─も哀しみも、俺が絶対に終わらせる。
だからお前ももう……自分を追い詰めるのだけはやめろ」



やっぱり親子だね、絃ちゃん。

まったく同じことを言われちゃったよ。



「天才ハッカー、今後も天鬼のために力を貸してくれ」



それはここにずっといていいと、言われているみたいだった。


そのまま男は優しい顔をして会場へと戻っていった。

そんな俺の握ったスマホが震える。



『天道さんっ!天道さんって今日懇親会でフェリースプリンスホテルにいましたよね?
私、その近くにちょうど用事で来てて───』


「桜子、会いたい。今すぐ。待ってて」


『えっ、あっ、天道さんっ!?』



ホテルを飛び出して、きらびやかな夜の街を走る。

パソコン片手に生きていた男はこうして走ることなんか滅多になくて。


でも最近は誰かさんの稽古をつけるために走り込みして、身体が慣れてくれてたみたい。



「きゃっ…!そんなに急いでどうしたんですか…!」


「桜子、俺ね、君が思ってるより…綺麗な人間じゃない、すっごく最低で、非道な男なんだよ」



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