光を掴んだその先に。─After story─
「はぁっ…、はーーっ、とうちゃーくっ」
やっと着いた最上階。
ビリビリのワンピースのまま、靴なんかもう抜いじゃって手に持ってるし…。
そんなスイートルームが待つ階へ辿り着いた私は、ペタリと座り込んでしまった。
「もうっ、広すぎる何ここっ!」
エレベーターの場所だってわからなし、そもそも部屋番号なんだっけ…?
ガサゴソと小さなバッグからカードキーを出して確認。
「5010……ごとー、ね!ごとー、ごとー!ごとーさーん!」
「誰だよ」
「───わっ!!」
鷹が背中から獲物を奪ってゆくように、それは気配なくスムーズな動きで身体は宙に浮いた。
ふわっと香る花のような匂い。
こんな姿のお姫様を抱えてくれる王子様が現れた。
「絃織!どうしてっ!パーティーは!?」
「抜けてきた」
「またぁ!?」
もう、こんなときくらいはそんなのしちゃ駄目なのに!!
…でも今日は私も大失態を犯してしまった。
それに……就職も。
「みんな怒ってた…?私、社長蹴っちゃって、投げちゃって、」
「ははっ、…惚れ直した」
「………え。」
長い長い廊下には私が履いていたパンプスが落ちていて。
そんなものすら気にしないまま、スタスタとお姫様抱っこで進んでいく王子様。
惚れ直した、なんてサラッと言って。
「ありがとう。…俺を、守ってくれて」
いつも守ってくれていた人が優しく放った言葉。
『必ず守るよ』と言ってくれていた人。
私は、その子を守れたんだと。
「…うん」
ぎゅっとしがみつくようにその胸に顔を埋めた。
大好きな香りを吸い込んで、遅くも速くもないスピードで5010室へと。