光を掴んだその先に。─After story─
ガチャッとカードキーが翳されて、中へ進んだと同時に鍵は閉められた。
ふわふわ浮いてしまうような気持ちのまま、綺麗な夜景に迎えられる。
キラキラ輝く光が目の前。
「…光は、近くで見たほうが綺麗だ」
「え…?」
「俺の場合、遠くだと駄目だ。ここになきゃ駄目なんだ」
その夜景を見つめる私を見つめて、腕に優しく抱いたままぎゅっと引き寄せられた。
もう掴んでいるよ、と言っても加わる力。
「もう待つのはやめた。もう待たねえ」
「え、絃織…?」
「俺と結婚しろ。───俺の嫁になれ」
就活、また頑張らなくちゃって。
だってぜんぶパーになっちゃったから。
また面接でズタボロな思いするんだろうな…って、思ってた今。
「それに、就活どうこう言ってられねえくらい忙しくなるぞ」
「え、なんで…」
「俺の婚約者として挨拶回りだったりがある。学校生活に支障は出ないようにするが、就活なんて暇はない」
「……」
どういうこと…!?
なんでそんなことになってるの!?
話の流れどうなってる…?
え、今わたし……プロポーズ、された…?
「え、…けっこん、て、…こんやくしゃ…て、…え、」
やっと追いついてきた。
ここにきて脳がフルパワーで回転。
「さすがに今回は断るなよ。3度目とかキツいんだよ」
「だってわたし、就職…」
「拒否権はない。俺だってもう今年25だ。
…どんだけ待たせる気なんだよ馬鹿」
これが、どうやら那岐 絃織のプロポーズらしいのだ。
昔はあんなにも優しかった少年は青年となって大人になって、こんな命令口調で俺様になってしまって。