光を掴んだその先に。─After story─
こんなこと言いたくはないが、赤ん坊の頃から絃に幸せを与えてきたのは俺じゃない。
美鶴でもない。
それはすべて小さな手でいつも大切に抱えてくれた絃織だった。
「お前がもっと軟弱で収入もないような男だったら反対してたんだがな」
絃の手を離したお前は「強くなる」なんて俺に言ってきて。
18歳で幹部入り、とうとう若頭にまで上り詰めやがった。
それは俺のコネだとか“那岐”だったからではなく。
本当に絃のためだけに強くなった結果だった。
俺の愛娘を守るために強さを身に付け、ガキからどんどん男になっていった絃織を誰よりも知っているのは俺だろう。
「ま、俺が生きてるうちには孫の顔見せてくれよ」
「安心しろおやっさん。わりと早い」
「おい泣くぞ」
「どっちだよ」
そんな親子の会話を聞いている美鶴が笑っているような気がして。
ほら、こんなモンは思ったモン勝ちなんだ。
それでもさすがにこれだけは父親として義理息子の胸ぐらを掴む俺。
「一応まだ高校生だぞ、弁えろよ馬鹿野郎」
「それは分かってるよ。でもあんたも17くらいの母さんを屋敷に連れ込んだらしいな」
「…おい、誰から聞いた」
「姉さん」
雅美…あの野郎……。
ベラベラベラベラと喋りやがって。
一気に俺が不利になってんじゃねえか。
「ふっ、似た者同士ってことだなおやっさん」
「…俺の責任にしてんじゃねえよ」
本当の親子じゃなくとも。
こいつを義理の息子にすると決めたのは美鶴だった。
本当の息子のように、誰よりも絃織を可愛がっていたのは美鶴。
それにお前は俺の大切な親友の息子でもあるんだ。
俺にとっても大事じゃないわけがない。