光を掴んだその先に。─After story─
「絃織、時間あるなら俺に付き合え」
「…なにかあるんですか」
「義理の息子として、付き合え」
浅くうなずいた絃織を連れて車を走らせた。
そして向かった場所は、また違う寺。
少し目立たない場所にある墓場だった。
「今度、絃も連れてきてやれよ」
「…墓なんか、あったのか」
そこは“那岐家”と書かれたものだった。
ここに眠る存在は1人じゃない。
俺も絃織も、いずれ“那岐”となる絃だってずっと背負っていかなければいけないもの。
ただ公にされていない事件だったため、この場所の存在を知る者は少なかった。
その息子ですら今になって初めて知ったのだ。
「慎二、絃織を連れてきたぞ。お前の息子がもう25になるんだと」
俺たちも年取ったな───と、慎二が好きだった日本酒の瓶を開けた。
6歳だったお前は信じられないものばかりを目にしてきて。
目に光などなく、ただ静かに涙を流して命の終わりを待っていたようなガキ。
それがあの事件の中にいた絃織だった。
「天鬼と那岐、また繋がるんだ。…俺たちのガキが繋げたんだよ」
酒が、うまい。
こんなにもうまい酒は久しぶりだ。
天鬼組と那岐組はずっと繋がった大きな組織だった。
極道一派の中でも勢力の大きかった2つ。
だからこそ対立したときは、どちらかが落とされる結果にしかならなくて。
「俺もよ、もっと他のやり方があったんじゃないかってずっと後悔してるよ」
たとえ意見の食い違いがあったとしても、あそこまでの悲劇の結末を迎えることは防げたかもしれないと。