光を掴んだその先に。─After story─




そして俺が慎二を殺し、絃織の父親を殺す羽目にも。

落ち着いて判断すればそうはならなかったかもしれない。


だが、どんなに悔やんだって過去は過去でしかない。

この世界は綺麗事でどうにかなるほどに綺麗な世の中でもない。



「父さん、」



それは俺の先にある墓へと向けられた言葉だった。


震える声でつぶやいた絃織は、静かにしゃがんで手を合わせる。

そこに一筋の涙が流れた。



「俺が天鬼も那岐も、途絶えさせない」



それだけ言って、あとは息子と父親だけの会話へと。


静まる空気にふわっとそよぐ風。

それはどこか心地が良いくらいに爽やかで。



「つうか絃織。前に絃が誕生日の夜、屋敷に帰ってきたんだが」


「…あぁ、あれは色々あったんだ」


「いろいろだぁ?あれだろ、実家に帰らせていただきますってやつじゃないのかあんなモン」



あんな夜に何を1人で帰らせてんだこいつは。

それに2人のマンションがあるらしいが、なにを勝手に同棲始めてんだ。


俺に一言もねえぞ、こいつ…。



「大丈夫だおやっさん。俺たちは誰にも切れない絃で繋がってるから」



誰にも切れない絃─いと─。


それは昔、美鶴も俺に言ってくれたことがあった。



『絃織とこの子は…きっと大丈夫。どんな壁があっても、深い深い誰にも切れない絃で繋がってるから…』



なんだよ、もうとっくに繋がってたんじゃねえか。

絃織や俺が思うよりずっとずっと前に美鶴は今の未来を見据えていたんだ。


絃が生まれるよりも前、誰よりも一番にこいつらの幸せを喜んでいたのは紛れもなく美鶴だったんだと。








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