光を掴んだその先に。─After story─
「お帰りなさいませご主人様っ!ほら絃もっ!」
「い、いらっしゃいませーーー…」
ご主人様って、もう間違ってない。
本当に高校を卒業したらこの人が私のご主人様になるのだ。
だからあえて言わないでおいたのに、陽太という厄介な男を連れているもんだから。
「ちょっと絃ちゃん。そんな挨拶だとコンビニ店員と変わらないから」
「う、うるさいな…!私だってこんなの本当はやりたくないんだから…!」
「うわぁ、生意気なメイドさんだ」
そんな中、バチッと目が合ってしまった。
普段と違う格好だとこれまた緊張してしまうのは私もだ…。
こんな服着たことないし、絶対領域と言うらしいスカートとニーハイの間に覗く太腿がスースーと。
「お、お帰りなさいませ……、ご主人様……」
小さく小さく言えば、ふっと笑った絃織。
「指名はこいつで頼む」
なんと勝手たるご指名。
いや絃織さん、もしもし絃織さん、ここって指名とか無いんですけど…。
ホストやキャバクラじゃないんだから…。
「んじゃ俺、絃ちゃんが頑張ってるとこ見たかっただけだから。校内ぶらぶらしてくるよ」
「えっ、陽太!?ちょっ…!」
「あっ、もしもし桜子?いま絃ちゃんの文化祭で───」
そのままスマホを耳に当てながら教室を出て行った1人。
残されたもうひとりは私の腕を掴んで、自ら座席へ向かってゆく。
きゃーきゃー囲まれる声の中、気にすることなく「コーヒーひとつ」と注文まで。
「てかイケメン執事っ!あたし達もうすぐ休憩入るから一緒に回ろうよ~」
「断る」
「相変わらず冷たっ!絃にばっかり優しくしてさっ」