光を掴んだその先に。─After story─
「い、絃織…?───…っ!」
パシッと腕は取られて、ぐいっと腰を引き寄せられる。
言葉にならない反応をしていれば、周りの女の子たちがその代わりに声を上げてくれるから。
「俺の嫁がガサツだと」
「え、嫁…?」
「それ含めかわいいだろうが」
なにが起こってるの。
しーんとなった。
教室がこれはもう静かになった。
みんなが目を見開いてる。
私でさえも目をパチパチ口をパクパク。
「わっ…!」
ぐいっとコーヒーを一気飲みした彼は、そのまま私の腕を引いて教室を飛び出して。
「ちょっと絃!?執事!?どういうこと!?」
優花なのか明莉なのか分からない声が追いかけてきたとしても、気にせず歩いてゆく。
「人の来ない場所はどこだ」
「え、」
「どこでもいい。倉庫とかねえのか」
その背中が問いかけてきた。
じろじろと文化祭に来ている子たちからの視線を掻き分けるようにしながら私へと。
人の来ない場所って、今日はどこも賑わってしまってるけど───…あ。
「体育館倉庫……」
体育館倉庫は2つあって、体育委員の私はなぜか鍵を1つ持っていた。
この文化祭で物置として使いたいから開けてくれないかって、他クラスの子に頼まれていて。
そんな場所へずんずん進んで行ってしまう絃織。
正面口からではなく、人の通らない裏口から入って倉庫へと。
「……絃織…?」
「俺はお前しか好きになったことねえぞ」
「え、あの、…え、」
ひとつの倉庫。
そこは体育館から直結ではなく、少し離れた場所にあるほうで。
内側からガチャッと鍵を閉めて、体育用品独特の匂いがする倉庫内に2人きり。