光を掴んだその先に。─After story─
「えっとぉ、絃なら…今日はまだ学校にいるみたいです」
明莉ぃっ…!!心の友…っ!!
明日から彼女には毎日笑顔で接したいと思う。
ありがとうありがとう、命を救ってくれてありがとう───と。
「陽太、」
「ん?なーに絃織さん」
「あいつに電話かけろ」
え…。
………え。
いつの間にか陽太のことを「陽太」と呼び捨てしている男は、きっと最初から分かっていたに違いない。
言われたとおり陽太はスマホを耳に当てた。
ピリリリリリリ────。
もちろんそれは私のポケットから鳴っていて。
「あり?なにしてんの、こんなとこで」
覗くようにテーブル下を見つめてくる陽太とバチッと目が合った。
そんな男も最初から分かっていたのだろう。何せこいつは天才ハッカーなのだから。
「た、タイムリープ…した、みたい…」
「えー本当に?不思議なこともあるもんだねぇ」
呑気な笑顔にどうしてか今は泣きたくなった。
「ひなたぁ…」と弱々しく名前を呼べば、そのうしろの空気はもっともっとダークなものに変わってゆく。
「これ合コン?楽しそうじゃん。俺も混ぜてよ」
「きゃーーー!!ぜひっ!!」
私が座っていた席には陽太が代わり、私の腕はもうひとりに引かれるまま。
カランカランとベルの鳴るドアの先へと。
そして車高の低い黒ベンツの助手席へと。
静かに発車する車はどこへ向かうのだろうか。