光を掴んだその先に。─After story─
甘い甘い時間
「えーっと、歯ブラシに箸、エプロン、食器…っと、」
他の日用品は揃ってたし、あとは私の着替え含むお泊まりセットくらいかな。
「わぁ、かわいい…」
「I」と、アルファベットがデザインされたマグカップ。
色の異なるものを1つずつカゴに入れて、レジへと。
そのあとは食材のお買い物をしてマンションに直行。
そんなものが金曜日の放課後ルーティンとなった。
「よしっ!完璧っ!」
“素人から始められる料理の基本!”なんて表記された雑誌も買って、ルンルン気分でマンションへ向かう。
このカードキーは絶対に落としてはならない。
今日はカレーにしよう。
カレーが基本だ。
それくらいなら私にだって作れるはず。
『これから金土日は勉強合宿してくるから…!』
そんなふうに理由をつけて、週末は彼のマンションで生活することになった。
みんな疑うどころか『頑張ってくださいお嬢!!』なんて応援までしてくれちゃって。
ちょっとだけ罪悪感はあったけど、でも世の中には正直に言えないことだってあるから仕方ない。
『もしかして2人の愛の巣ってヤツ?』
その中でも唯一からかってくる男は案の定、陽太。
愛の巣って……。
それって新婚ほやほや夫婦に言う台詞だよ…。
「しん……こん……、けっ、こん…」
ぶんぶんと勢いよく首を横に振る繁華街にて。
「だめだめっ!まだそういうの想像しちゃだめっ!」
今の私はそういうの考えちゃだめ!
炊事洗濯も一人前になって、その先で───…。