光を掴んだその先に。─After story─
「わぁ……きれい…」
ブライダル店のショーウィンドウに飾られた純白のウェディングドレス。
隣の新郎さんの衣装も銀色をした、長めのジャケットに同じ色のネクタイ。
そんな2人のマネキンが腕を組むように立っていた。
「だからそういう妄想しないの私っ!!」
再びぶんぶんと首を横に振って、頭上にイメージされた未来の姿を無理やりに消した。
黒板消しで必死に消すように。
でもぜったい似合う…。
私じゃなくて絃織が、だ。
「格好良いんだろうなぁ…」
お洒落なチャペルで。
海が見えるような素敵な場所で。
でも彼のことだからあまり盛大にはやらなそうだ。
「俺は2人だけでもいい」なんて言っちゃうような人だから。
神父さんに、オルガンを弾くシスターさん。
「その隣にいるのは……」
桜子ちゃんなら誰も文句は言わない。
縁談相手だったし、大手家電メーカーのお嬢様。
お料理もできて頭だって良くて可愛い子。
雅美さんだったら、納得しすぎて涙すら出なさそうだ。
彼女も絃織のことが好きだと言っていた。
でも最近は忙しそうにしていて、ぜんぜん顔を合わせてない。
「姉ちゃん、自分からぶつかっておいて無視はないんじゃないのー?」
「おじさん怪我しちゃったかもしれないよ?」
今度は街角の路地裏にて。
ひとりのパンツスーツ姿の女性は、数人の男達に囲まれていた。
こういうところを目撃しちゃったら放っておけないのが天鬼 絃(あまき いと)でもある。