光を掴んだその先に。─After story─
雰囲気が和らいだ。
そんなものにちょっとだけ安心。
それにしても、ずっと思ってたけど……。
「このベッド、すっごく大きくない…?」
4人は並んで寝れるくらいの大きさ。
それにキッチン用具とかもそうだけど、生活に困らないものは揃えられていて。
ここで1人で暮らしてたの?って思うのに、ぜんぶ新しいものだから不思議だった。
「…本当はお前のために揃えてあったんだ」
「え…、私…?」
「あぁ、施設から出て万が一天鬼組に溶け込めなかった場合に、住まわせてやる場所は必要なんじゃねえかと思ってな」
ここはずっとそんなために用意されてたマンションだったんだ…。
どこまでも優しい人だ。
そしてやっぱり私のことばかりを考えてくれちゃってる。
思わずぎゅうっと腕を回した。
「ありがとう絃織。私、まだ何にも返せないけど…でもっ」
「お前がいてくれるだけで十分だ。…ずっと俺の隣で笑っててくれれば、それでいい」
「うん…。ずっと笑ってるっ」
ちゅっと甘く優しいキスがひとつ。
髪をゆっくり撫でてくれる柔らかい手。
そんなものとは反対に、離れた表情はちょっとだけ悪戯で。
「まぁでも、たまに啼かすかもしれねえが。…たまにっつうか、できればほぼ毎日」
「えっ、なんで…!?」
「悪い意味じゃねえから安心しろ。…むしろ、すげえ良いぞ」
良いものなの…?
どんな意味かは分からないけど…。
まぁ今はいっか…?
でもこんなにも幸せな朝があるんだと、私は初めて知ったかもしれない───。