光を掴んだその先に。─After story─
そのパスケースは途中から使わなくなったもの。
けれど今は電車を使う日もたまにあるから、定期を入れている本当のパスケースはまた別のものを使っていて。
その落ちたパスケースには私の宝物が入っていた。
「───…これ…、」
「うんっ。誰か分かる?」
表面を見つけた彼は、じっとそこに映る2つの小さな背中を見つめた。
そこには7歳くらいの少年と、おんぶ紐で離れちゃわないように繋がれている赤ちゃん。
私は初めてこの写真を見たとき、泣きそうになった。
「…いつ撮られてたんだ」
「この1枚しか無いんだって。あははっ、隠し撮りされちゃってる」
「……チヨさんだな」
チヨさん…?
どうやら絃織には心当たりがあるらしい。
「俺が学校行ってるときは、その使用人にお前を任せてたんだ」
「そうなんだ…」
今、その使用人は屋敷にはいない。
それはきっとそういうことだ。
私がいなかった14年間に、お母さんが待っている場所に行ってしまったんだろう。
そしてチヨさんという人の話をゆっくりと聞かせてもらった。
私と絃織にいつも優しくしてくれた人だったって。
彼はその使用人に最初、赤ちゃんのお世話を教わったらしい。