光を掴んだその先に。─After story─
「じゃあチヨさんも、私たちがまた会えてきっと喜んでるね」
「…あぁ」
パスケースを見つめるその眼差しは、何よりも優しいもの。
そこに映っている少年が私の目の前にいて、おぶられた赤ちゃんもここにいる。
それが奇跡のように思えた。
「わっ、…へへ、」
伸びてきた手が私の頭を撫でる。
お父さんでもなくお兄ちゃんでもなく、それは私が大好きだった手。
そんな私も今度、その少年へ腕を伸ばした。
「…俺は赤ん坊じゃねえぞ」
「うん、でも今の私はこうしてあげられるからっ」
わしゃわしゃと撫でて、ぎゅっと抱きしめる。
いつも私を守ってくれた人。
小さな手で、小さな背中で、いつも安心を与えてくれた少年。
「よーしよし。いい子いい子」
「……俺、24なんだが」
「私だって18だよ?」
だとしても、あのときの私たちはちゃんといる。
変わっちゃっても変わらないものは絶対にある。
あの頃の私たちがいたから、今の私たちがいるんだから。
「もう18になったのか。よし、じゃあ問題ねえな」
「えっ、ちがうっ!もうすぐなるってこと…!まだ正式にはなってないからっ!」
「誘ってきたのはお前だ」
ぎゅっと抱きしめ返してきた彼は、誰よりも幸せそうに笑っていた。