光を掴んだその先に。─After story─
2人だけの
ふわっと香るスパイスの匂い。
湯気の立つホカホカの白いご飯、とろーり布団のようにかかるルー。
ゴロゴロ入った野菜はどんな形かな?なんて想像して。
「わ~!おいしそっ!!いっただっきまーすっ!!」
「よく噛んで食べるのよ?たくさんおかわりあるからゆっくりね」
「はーいっ!」
「カレーでそこまで喜ぶのお前くらいじゃね」なんて、隣の席から聞こえてきた声は安定のスルー。
同じように置かれた小皿にはポテトサラダ。
上に飾られたゆで卵が、これまた可愛く星形に型取られていた。
「ん~!これだよこれっ!お袋の味ってやつ?やっぱり落ち着くなぁ」
「昔っから絃ちゃんだけが喜んでくれるのよね」
「みっちゃんおかわりっ!」
「はいはい、そんなに急がないの」
時計の針は18:00を過ぎていた。
そんな私は大きな旅館のような家ではなく、もうひとつのお家に帰ってきている。
そしてこうして夕飯を食べているわけなのですが。
「てか、なんでお前ここにいんの」
やっと突っ込んでくれたね佳祐(けいすけ)くん。
このままスルーされたらどうしようかと思っていたよ。
「たまには実家に帰りたくなるときもあるのー」
「お前の実家はちゃんとあるだろ」
「あれぇ?前に私のもうひとつの家を守るって言ってたような気がするなぁ~」
「なんの話?」