光を掴んだその先に。─After story─
またとぼけてるしっ!
毎度毎度なんなのっ!
この施設で同じように育った、幼なじみのような家族のような桜木 佳祐(さくらぎ けいすけ)は、「なにかあったのか」と核心をついてくる。
思わずピタリとカレーを食べる手が止まった。
「どうせお前のことだし、向こうに帰りたくない理由でもあるんだろ」
うっ…やはり鋭い。
共に過ごして10年以上、離れてからまだ2年目だし当たり前か…。
「…喧嘩した」
「喧嘩?那岐さんと?」
「…うん」
あれは喧嘩って言っていいか分からないけど、ほんの些細なこと。
喧嘩っていうか絃織が私に甘すぎるというか。
前はもっともっと乱暴な扱いだったのに、最近はずーっとずーっと甘いのだ。
「で、その理由は?」
「…バイト、しちゃ駄目だって」
「そりゃ俺たち受験生だし、当たり前じゃね」
「ちがうのっ!だって私は進学でも就職でもな───」
はっ…!!
これは誰にも言っていないというのに口が滑った…!!
そう、私の就職先はある意味“天鬼組”だ。
それがどういう意味を示すかは考えているようでぜんぜん考えられない。
「…まぁ、お前のとこはそういうとこだしな。別にいいじゃんバイトなんか卒業してからでもできるだろ」
「…そう…なんだけどさ…、」