光を掴んだその先に。─After story─
「突きは止めを怠らない!」
「はい!!」
「脇締めて!内股やめる!」
「押忍…!!」
その屋敷の道場から聞こえた声は少ないものだったが、気迫だけは数十人分はありそうなほど。
少々長引いた合同会議後、たまたま通りかかった入り口前。
平日の20時だというのに何をしているんだあいつらは。
「見ててね絃ちゃん」
ビュンッ───!
確かあいつは天道 陽太だったか。
黒帯を身に付けたその男は、白帯の少女スレスレに回し蹴りをしてみせた。
「ぎゃぁっ」と、少女は身を屈めるように踞っている。
「はい怖がらなーい。さぁ組み手しようか」
「えっ、はっ!?さすがに無理だって陽太!!蹴るの!?親友を蹴るのっ!?」
「うん。いまは師匠と弟子だもん」
「ガチじゃん…!手加減とかしようよっ!!」
「手加減?なにそれ美味しいの?」なんて笑っている天道は、空手を得意としているらしい。
組長が代わり頭も代わり、周りからナメられているなんて噂を聞いていたが。
やはり中には逸材が隠れているみたいだ。
「で、佐伯のおねーさんも一緒に稽古する?」
「……いつから気づいていた」
「えー、最初から」
そして洞察力にも優れている。
柔道と空手、それは似ているようで全然ちがうものだった。
拘束技を基本とする柔道とは異なり、空手はやはり実戦向き。
「いつも稽古してるのか」
「まぁね。この子はどうやら誰かさんみたいに強くなりたいらしくて」
「天鬼のお姫様ならそんなことさせる必要はないんじゃないか?」