光を掴んだその先に。─After story─
空手が得意な親友が傍にいることだし、なによりどんな者にも負けないくらいの強さを持つ恋人がいるのだから。
それなのに胴着姿の天鬼 絃は稽古を続ける気らしい。
「あーなるほどねぇ。うんうん、絃ちゃん分かるよ。すっごい分かる」
そんな男は何かを観察するようにあたしをじっと見つめ、首を上下に動かす。
なんだ…?
なにか変なことでも言ったか…?
「もしあの人が佐伯のおねーさんを選んだとしたら、まじ見損なうね俺」
「…どういう意味だ」
思わず言葉を返してしまった。
こんな挑発染みた煽りには乗りたくないのだが、こいつが指す“あの人”が誰のことを言っているのか。
そんなものは分かってしまうから。
「おねーさんさぁ、友達いないでしょ?」
「…ふん、そんなもの最初から欲しくもない」
「できない人が必ず言う強がりおつー。余計な一言多いもんね、あんた」
なんだこいつ…あたしはこういうタイプが大嫌いだ。
ヘラヘラして男らしくない。
今すぐその間抜け面を締めてやりたいくらいだ。
「絃ちゃんは今のままで十分じゃん。きっと絃織さんもそう言うと思うのに」
やはり那岐 絃織がずっと言っていた“いと”はこの娘だったのか…。
確かに天鬼組の大事な姫であり、特別な存在なのは確かだ。
あの男とこの娘が知り合うのは必然。
「手も絆創膏だらけでどしたの。就活だって、なにをそんなに必死になってるんだか」
「っ、いーのっ!!今のままじゃ駄目なの!!」