内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 そういえば、宇月温泉については、父から出た話だった。普段は自分からなにかを提案することはあまりない人なのに……。
 一方で、新規開拓の件について、宇月温泉の名前が上がったことには、大雅自身、戸惑いを感じていた。
 宇月温泉が祐奈の故郷だからだ。
 もちろん祐奈は都内にいると思っていたから、まさか顔を合わせることになるとは思っていなかったけれど、それでも彼女を連想させるなにかに遭遇するだけで、大雅の胸の傷は、ひとりでにじくじく痛み始める。
 今日、現地視察の前に祐奈が先に帰ってから、祐奈の父親と友人だったという田原が彼女について少し話をしていた。その話によると、彼女は出産を機にプライマリーホテルを辞めてひとりで宇月へ帰ってきたという。
 子を育てるために親元へ戻ったのだろう。
 でもそこまで考えて、大雅の胸がコツンと鳴った。
 祐奈は大雅と別れてから新しく誰かと出会い、子供を授かり、その誰かと別れて出産を機に故郷へ戻った。
 ——でも二年で?
 子供は一歳だと言っていた。
 そうだ、それを聞いた時も大雅は妙な違和感を覚えたのだ。
 女性が命を授かり出産するまでの日数を大雅は正確には知らないが、確か十カ月くらいはかかるはず。
 であるならば、祐奈は大雅と別れてすぐに子を授かったということになる。
 ——本当に別れてからだったのか?
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