内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「そう、よかった。お子さんは一歳だったっけ」
「はい、……そうです」
「小さいとただの風邪でも心配だね。一歳か……。一歳…………何カ月?」
「……え?」
 また少し意外な言葉を投げかけられて、祐奈は再び言葉に詰まる。
 育児中の母親同士の会話なら、よくある質問かもしれない。
 けれど男性のしかも仕事関係の相手から出た問いかけとしては、少し違和感のある内容だった。
 大抵は"一歳です"と答えれば"一歳何カ月か"までは聞かれない。
 大雅は相変わらずにこやかに祐奈を見下ろしている。その表情からはなにも読み取ることはできなかった。
 それなのに、彼の質問にどこか不安を感じるのは、祐奈が息子について人には言えない秘密を抱えているせいだろうか。
「あ、あの……一歳……三カ月です」
 他に答えようがなくて、祐奈は本当のことを口にする。
「一歳三カ月……」
 すると大雅が目元を少し険しくさせて呟いた。
 その様子に祐奈はしまったと思い唇を噛む。
 胸の鼓動がどきんと嫌な音で跳ねあがり、警告をするようにスピードを上げはじめる。
 大和の月齢と妊娠期間を正確に計算されてしまったら大和の父親が彼だと気付かれてしまうかも。
 でも口から出た言葉は、もう取り消すことはできなかった。
「一歳三カ月かぁ、早いなぁ。もう歩く?」
 田原が呑気な声で会話に飛び込んでくる。
 祐奈は、大雅の視線から逃れるように、田原の問いかけに対する答えを口にした。
「あ、まだです。うちの子ちょっとのんびりやみたいで……」
 大雅はそれをチラリと見て、またすぐに穏やかな表情に戻った。

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