内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました～極上シークレットベビー～

「この辺りは、昔からのお土産物屋さんが並んでいる通りです。宇月の特産品は、山の清流で採れるワサビですから、それを模したゆるキャラも……」
　メインストリートに入ると祐奈は大雅の少し前を歩き、温泉街の説明を始める。
　案内員としてこの辺りでは顔を知られている祐奈と、明らかに外部から来たとわかる都会的な空気をまとう大雅は少し目立ってしまっている。
　それなのに大雅自身は特に気にする風でもなく平然として、店の一軒一軒を興味深そうに眺めている。
「時間はたっぷりありますから、気になる店があれば立ち寄ってくださってけっこうですよ」
　田原が言うと、大雅は通りを楽しげに眺めて、ある一軒の店に目を止めた。
「アイスクリーム屋がありますね。新しいのかな」
　田原が頷いた。
「そこの土産物屋の夫婦が新しく始めたんですよ。最近はジェラートっていうんですか、種類が多くてオシャレですから、温泉街の目玉になればいいなと期待しとるんですわ。食べながら街を散策できるようになっています」
　そんなことを言いながら一同がアイスクリーム屋に立ち寄ると、中から土産物屋兼アイスクリーム屋の女将が顔を出した。
「あら祐奈ちゃん、どうしたの今日は。もしかしてデート？　びっくりするくらいのイケメンさんを連れてるじゃない！」
　彼女は思ったままを口にする。
　祐奈は慌てて首を振った。
「お、おばさん！　違うわよ。仕事、仕事」
「あらそうなの。デートならサービスしちゃおうと思ったのに」
　少しがっかりしたように言うおかみに、大雅が微笑んだ。
「随分と親しいようだね。もしかして常連さんかな？」
「そうなんですよ」
　答えたのはおかみだった。