内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました～極上シークレットベビー～

「こういう話なら、失礼させていただきます」
　怒りに声を震わせて、祐奈は冷たく頭を下げる。
　一刻も早く、この場を去らなくては。
　だがひと足早く大雅が、祐奈の腕を捕らえた。
「話を聞いてくれ、祐奈!!」
　風の音だけが聞こえる静かな景色に、大雅の差し迫った声が響く。今日一日、天沢ホテルの完璧な副社長だった彼が放つ切実な叫びを、祐奈は目を見開いて受け止めた。
「確かに俺は君に嘘をついてた。天沢ホテルという肩書きなしに、ありのままの自分でいられる君の隣が大切だったからだ。でもそれは言い訳にしかならない！　遊びだったのかと君が怒るのも無理はない！でも……！」
　大雅が掴んだ祐奈の腕を揺さぶる。
「でも、君を愛していたことは本当だったんだ！　君を愛していたんだ、祐奈!!」
　まるで直接心を掴まれて揺さぶられているような気分だった。
　二年前の電話でも彼は同じことを言っていた。
　でもその時は祐奈の心に彼の言葉は届かなかった。
　きっと彼は遊びだったのだと、そう思うことで自らの想いから目を背けた。
　でも今ならわかる。
　大雅の心は、あのアパートでの時間は、真実の愛に満ちていた。
　ふたりは、本当に愛し合っていたのだ。
　……それでも、彼が天沢大雅だということは、変えられない事実だった。
　彼の視線から逃れるように目を閉じて、祐奈はゆっくりと首を振る。