内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「私がですか?」
祐奈が眉を寄せて問いかけると、課長の田原が頷いた。
「そう、ぜひお願いしたいんだよ」
真由香から宇月ランドの件について話を聞いたちょうどすぐ後に、案内所からほど近い役場の観光課にいる田原から電話が入った。
話があるから勤務を少し早く切り上げて、役場に寄ってほしいというのだ。
電話を受けた時刻は四時半。勤務時間は午後五時までだから、祐奈は残りの業務を真由香に任せて案内所を出た。
そして訪れた役場の会議室で祐奈を待っていたのは意外な話だった。
真由香が話していた天沢ホテル誘致の話は本当だった。
まだ本決まりではないというのも本当の話で、これから観光課は課をあげて天沢誘致に全力を注ぐそうだ。
そのプロジェクトチームに、祐奈も参加してほしいというのだ。
正職員ではない、観光案内所の案内員として採用された祐奈が街の命運がかかっているといっても過言ではないプロジェクトに関わるなど、異例中の異例だ。
眉を寄せたまま祐奈は、田原の提案に答えられないでいる。
「君の、経験をかっているんだよ」
田原が言った。
「観光課の人間は宇月の魅力をアピールすることはできるだろうが、皆地元を出たことがない人間だから、東京から来る先方とは感覚がズレている部分もあるはずだ。そのあたりの調整をお願いできないかと思ってね。君は二年前までは東京の一流ホテルにいたんだ。適任だろう?」
「でも私、ただのフロント係だったんです。そういった話なら、旅館組合の方たちの方が詳しいんじゃないですか」
一概にホテル勤務といっても企画課などの本社勤務と、フロント係はまったく仕事内容が違う。
たとえ東京にいたことがなくても、地元の旅館関係者に協力を仰ぐ方がいいのではないだろうか。
だがその祐奈の言葉に、田原は難しい顔になる。
「うーん。それもそうかもしれないんだが、役所としては、特定の旅館の関係者だけこの件に関わってもらうのは避けたいんだよ。後々問題になっても困るからね。その点君は……い……いや、どこの旅館とも関わりがないから……」
最後の方は少し声を落として申し訳なさそうに言う田原に、祐奈は「そうですか」と呟いてうつむいた。
今田原が言いかけてやめた言葉が祐奈にはわかった。
彼は"今は"と言いたかったのだ。
祐奈が眉を寄せて問いかけると、課長の田原が頷いた。
「そう、ぜひお願いしたいんだよ」
真由香から宇月ランドの件について話を聞いたちょうどすぐ後に、案内所からほど近い役場の観光課にいる田原から電話が入った。
話があるから勤務を少し早く切り上げて、役場に寄ってほしいというのだ。
電話を受けた時刻は四時半。勤務時間は午後五時までだから、祐奈は残りの業務を真由香に任せて案内所を出た。
そして訪れた役場の会議室で祐奈を待っていたのは意外な話だった。
真由香が話していた天沢ホテル誘致の話は本当だった。
まだ本決まりではないというのも本当の話で、これから観光課は課をあげて天沢誘致に全力を注ぐそうだ。
そのプロジェクトチームに、祐奈も参加してほしいというのだ。
正職員ではない、観光案内所の案内員として採用された祐奈が街の命運がかかっているといっても過言ではないプロジェクトに関わるなど、異例中の異例だ。
眉を寄せたまま祐奈は、田原の提案に答えられないでいる。
「君の、経験をかっているんだよ」
田原が言った。
「観光課の人間は宇月の魅力をアピールすることはできるだろうが、皆地元を出たことがない人間だから、東京から来る先方とは感覚がズレている部分もあるはずだ。そのあたりの調整をお願いできないかと思ってね。君は二年前までは東京の一流ホテルにいたんだ。適任だろう?」
「でも私、ただのフロント係だったんです。そういった話なら、旅館組合の方たちの方が詳しいんじゃないですか」
一概にホテル勤務といっても企画課などの本社勤務と、フロント係はまったく仕事内容が違う。
たとえ東京にいたことがなくても、地元の旅館関係者に協力を仰ぐ方がいいのではないだろうか。
だがその祐奈の言葉に、田原は難しい顔になる。
「うーん。それもそうかもしれないんだが、役所としては、特定の旅館の関係者だけこの件に関わってもらうのは避けたいんだよ。後々問題になっても困るからね。その点君は……い……いや、どこの旅館とも関わりがないから……」
最後の方は少し声を落として申し訳なさそうに言う田原に、祐奈は「そうですか」と呟いてうつむいた。
今田原が言いかけてやめた言葉が祐奈にはわかった。
彼は"今は"と言いたかったのだ。