内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました～極上シークレットベビー～

「……そんなこと、今さら……今さら聞いてもなにも変わらない」
　溢れそうになる涙をこらえながら。
「今さら……そうだろうか」と大雅は言う。
「そうよ！」と祐奈は答えた。
「もう過去のことだと？」
「……過去のことよ」
「でも俺は、俺はまだ君を……」
「だってあなたが！　あなたであることに変わりはないじゃない!!」
　感情的になりすぎて、祐奈は言わなくていいことを口走ってしまう。
　それを大雅は聞き逃さなかった。
「……俺が？」と呟いて、眉を寄せて祐奈を見る。
　祐奈はしまったと思い口を噤んだ。
「どういうことだ、祐奈」
　低い声で問いかけられても答えることなどできるわけがない。
　祐奈は彼から目を逸らしてうつむいて首を振った。
「な、なんでもない」
　大雅は身を屈めて祐奈を覗き込み視線を合わせる。そして唇を噛む祐奈に静かに問いかけた。
「祐奈、確かに俺は君に嘘をついた。だからこそ、これからはなにひとつ嘘は言わないと誓うよ。だから君も、本当のことを言ってくれ。……俺たちは、どうして別れなくてはならなかったんだ」
　祐奈の身体がびくりと揺れる。
　真実は絶対に知られてはならないと強く思う。
　あなたの父親は私の父を死へ追いやったのだと告げるのことなど、祐奈には絶対にできそうにない。
　祐奈は少し震える唇をゆっくりと開いた。
「あなたが、私に嘘をついていたからよ。大事なことで嘘をつく人とは付き合えないって思ったの……それだけよ」
　そう言って祐奈は真っ直ぐに大雅の視線を受け止めた。
　彼が真実にたどり着くことはなんとしても阻止したい。
「それ以外になにもないわ」
　頑なな祐奈の態度に大雅は深いため息つく。
　そして祐奈の腕を解放すると、眼下に広がる宇月温泉街を眺めた。