内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
夕暮れの街、保育園へ続く坂道を、祐奈は靴音を鳴らして下っている。
胸の中のもやもやを振り切るように、ただ一心不乱に。
宇月温泉は海と山に囲まれた坂の街、その坂を一番下まで下りたところに街でただひとつの保育園がある。
少し息を切らして、錆びついた赤い門扉を開くと、息子の大和(やまと)は園庭にいた。
ベテラン保育士大山田(おおやまだ)に抱かれて少しふてくされた表情で。
「大和」
祐奈は慌ててふたりに駆け寄る。
大山田が振り返って微笑んだ。
「ああ、ママが帰ってきた。大和くん、よかったね」
大和は今しがたまで泣いていたようだ。頬に涙の筋が残っている。祐奈を見つけると嬉しそうに手を広げた。
「あーま」
祐奈は大山田の腕から大和を抱き取った。
「また泣いてたんですね。すみません」
祐奈は大山田に向かって頭を下げる。この時間は本当なら、子供たちは部屋で親の帰りを待つことになっている。
園庭に出てきていたのは、泣いてしまった大和をあやすためなのだろう。
大山田が微笑んだ。
「ちょっとだけよ。大和君日中はいつもいい子にしてるもの。この時間は仕方がないわよね」
大和は朝登園時は祐奈と離れるからといって泣くことはない。でも夕方はどうにも寂しくなるようで、泣きながら祐奈の迎えを待っていることが多かった。
「ちょっと待ってね。鞄持ってきてあげるから」
そう言って大山田は園舎の中に入ってゆく。
その後ろ姿に「すみません、ありがとうございます」と頭を下げて、祐奈は大和に頬を寄せた。
胸の中のもやもやを振り切るように、ただ一心不乱に。
宇月温泉は海と山に囲まれた坂の街、その坂を一番下まで下りたところに街でただひとつの保育園がある。
少し息を切らして、錆びついた赤い門扉を開くと、息子の大和(やまと)は園庭にいた。
ベテラン保育士大山田(おおやまだ)に抱かれて少しふてくされた表情で。
「大和」
祐奈は慌ててふたりに駆け寄る。
大山田が振り返って微笑んだ。
「ああ、ママが帰ってきた。大和くん、よかったね」
大和は今しがたまで泣いていたようだ。頬に涙の筋が残っている。祐奈を見つけると嬉しそうに手を広げた。
「あーま」
祐奈は大山田の腕から大和を抱き取った。
「また泣いてたんですね。すみません」
祐奈は大山田に向かって頭を下げる。この時間は本当なら、子供たちは部屋で親の帰りを待つことになっている。
園庭に出てきていたのは、泣いてしまった大和をあやすためなのだろう。
大山田が微笑んだ。
「ちょっとだけよ。大和君日中はいつもいい子にしてるもの。この時間は仕方がないわよね」
大和は朝登園時は祐奈と離れるからといって泣くことはない。でも夕方はどうにも寂しくなるようで、泣きながら祐奈の迎えを待っていることが多かった。
「ちょっと待ってね。鞄持ってきてあげるから」
そう言って大山田は園舎の中に入ってゆく。
その後ろ姿に「すみません、ありがとうございます」と頭を下げて、祐奈は大和に頬を寄せた。